頼れる人がいない
内閣府が初めて推計した令和6年の孤立者数(自を含む)は、2万1856人。取りまとめを担当した有識者のワーキンググループは後8日以上経過して発見されたケースを孤立と位置付けた。男性が1万7364人に対し女性は4466人で、男性が約8割を占めた。
日本福祉大の斉藤雅茂教授(社会福祉学)がこの推計と5年度人口動態統計における亡者数に基づいて、性別、年代別に亡者数に占める「孤立」の割合を算出したところ、55~59歳男性の孤立の割合が7.6%と他の属性より高いことが判明した。
背景の一つに考えられるのが、相談を苦手とする男性の傾向だ。内閣府が公表した6年の「人々のつながりに関する基礎調査」でも50代男性は、「困ったときに頼れる人がいない」15.1%▽「相談する人がいない」18.4%-と、男性全体でも孤立の度合いが高かった。
斉藤教授は「中年世代で周囲とのつながりがないと、突然や不慮の事故で亡くなった場合、発見までの日数が長くなり孤立に陥るリスクが高くなる」と警鐘を鳴らす。
稼ぎ手という重圧
一方、孤立に加え、男性に対する「無意識の思い込み」が生きづらさにつながっていると話すのは、京都大の伊藤公雄名誉教授(ジェンダー社会学)だ。
伊藤名誉教授は、男性が一馬力で家計を支えることができた高度経済成長期からだいぶ時間がたったにもかかわらず、「『男性が稼ぎ手であるべきだ』という思い込みが男女双方に根強く残っている」と指摘。(略)
また、管理職世代の男性が、女性や若者ら多様な価値観を持つ部下とのコミュニケーションに苦慮している(略)、企業に対話を促す仕組みづくりを求めるとともに「男性自身が悩みを打ち明けやすくなるように、政府が公的な男性の相談の場を広げる方針を掲げてほしい」と訴える。(篠原那美)
産経新聞 2025/11/19 07:00
