自然保護団体「日本熊森協会」(本部・兵庫県西宮市)は11月6日、都内で記者会見を開き、北海道や東北などで相次ぐクマの出没を受け、同日付で環境大臣宛てに「緊急要請」とする要望書を提出したことを明らかにした。
要望書では、捕一辺倒の対策には限界があるとして、被害防除や森の再生など、長期的な視野に立った取り組みの必要性を訴えている。
協会は記者会見で「毎日のように人身事故や大変なことが起きていて、私たちも人身事故を止めたいという気持ちで活動しています」と理解を求めた。
クマによる被害は深刻化しており、今年度の人身被害による亡者数はすでに過去最多の13人に達している。
地域によっては、イベントの中止や保育園・小学校の送迎強化など、生活や経済活動に大きな影響が出ている。
要望書は環境大臣のほか、農林水産大臣にも送付したという。
会見には、協会会長で弁護士の室谷悠子さんのほか、北海道、秋田、岩手、宮城、福島の各支部長が出席した。
政府は10月30日の関係閣僚会議で、人里に侵入したクマの迅速な駆除に向け、緊急猟銃を実施できる者の拡大措置などの対策に向けて議論が進められた。
こうした流れに対して、協会は「捕だけでは問題が解決しないことは、これまでの状況から明らかです」と指摘。出没防止、緩衝帯整備、追い払いなどの「被害防除」への予算投入を求めた。
クマ出没増加の背景について、中山間地域の過疎化や高齢化による「クマと人との生活圏の近接」に加え、メガソーラー建設などによる森林伐採も要因の一つだとした。
室谷さんは、かつてはクマと人との間に自然なすみ分けがあったと述べ、捕よりも環境整備が重要だと訴えた。
「いくら自衛隊や機動隊を入れて、捕し続けても、絶滅寸前まで捕しないといけなくなる。長い目でみれば、動物の来ない集落をつくるほうが効果が上がる。人身事故を防ぐためにも防除に予算をと、国にも自治体にも訴えていきたい」(室谷さん)
協会は捕そのものに反対しているわけではなく、必要な場合もあるとの立場を示している。
一方、SNS上では、「熊森協会が自治体に『クマをすな』などのクレームを入れている」といった投稿も見られる。
こうした指摘に対して、室谷さんは「日本熊森協会が『自治体に連絡してください』という呼びかけをしているなどの事実はない。把握している限り、うちの会員がどこかに電話をかけて、ものすごく困った事態になっていることはない」と否定した。
同協会の会員は、2023年ころの2万人からゆるやかに増え、現在は約2万1000人を数えるという。
会見では、北海道や東北の支部長らが現場の状況を報告し、捕偏重の現状に疑問を投げかけた。
「(ゴミなどがクマを寄せ付けているとして)近づけてクマを呼び出しているのは私たち」「呼ばないことが大事。呼ばないイコール人的被害にならない」(北海道支部長の鈴木ひかるさん)
「2023年にも大量出没があり、推定生息数の半数が捕されたが、現在も状況はよくならず悪化し、当時よりも早いペースで捕が進んでいる」(秋田県支部長の井阪智)
「子グマをすのは人道的にも問題。クマだからしてよいという風潮が広がるが、子グマに手をつけるのは間違っている」(岩手県支部長の東淳樹さん)
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